◆「漫画原作」持ち込みの際の注意点 ※2025年6月更新
応募原作執筆の前に、必ず以下①~⑥すべてをお読みください。
下記を踏まえていないと思われる応募作品は、大変恐縮ですが講評をせずにお戻しいたします。
①漫画原作は、作画する漫画家さんのためにも【ヒットを狙える作品】 が求められます。
ご存じの通り漫画家さんもキャラクターや物語はいくらでも考えられます。漫画原作者に求められるのは、それをはるかに凌駕するぐらいの新しく魅力的なキャラクターや、漫画の市場を驚かせるぐらいの斬新なアイデアやインパクトの企画性、そしてその魅力的な原作を書くために必要な流行や需要、専門的情報を調査していく能力です。それらが充実した、多くの読者に求められる魅力の強い作品でなければ、そしてたくさんのよい漫画を読み込み、多くのことを学んでいる漫画原作者の作品でなければ、「描きたい!」と手を挙げてくださる漫画家さんが現れることはないでしょう。
つまり、漫画原作者はただ書きたいものを書けばいいのではありません。毎月、生活や人生をかけて連載原稿を描いてくださる作画担当の漫画家さんのためにも、ヒットする可能性の高いものを生み出さなければなりません。責任重大です。多くの読者に共感されているキャラクターやヒット漫画の研究と市場調査は、漫画原作者として最低限やらなければならないことなのです。
テキストの漫画原作を持ち込んでいただく方の作品には、明らかに普段、漫画をほとんど読んでらっしゃらないのだろうと感じられるものが非常に多いです。漫画の読者のことを考えていない、漫画への愛を感じない、漫画の体をなさない見当はずれな漫画原作が、漫画として描かれ日の目を見ることなど絶対にありません。まずは、もっともっと現在の人気漫画&素晴らしい漫画をたくさん読んで読んで読みまくって、必ず漫画やキャラクターをとことんまで勉強・分析されてから執筆、ご応募ください。 そういった漫画原作に対する本気さや責任が感じられない作品は、大変恐縮ではありますが講評せずにお戻しいたします。漫画についてとことんまで研究し勉強しつづけていくおつもりがないのであれば、当編集部への持ち込みも、漫画原作者になることもあきらめてください。
②シナリオ内に【漫画のページの区切り】 を必ず入れ、漫画にして50ページ未満の第1話をご応募ください。
テキストシナリオにて漫画原作を持ち込むのであれば、■P1、■P2…、または<ページ1>、<ページ2>…といった漫画になった際のページの区切りをシナリオ上に必ずわかりやすく設けてください。 漫画原作者として、漫画の1ページ1ページに描かれることをしっかりと意識&イメージすることが大切です。原作としても漫画家さんに伝わりやすいものになります。
また、応募作品がストーリーコミックであれば、漫画になったときに最大で50ページ未満に収まる第1話を提出してください。漫画原作の第1話は多くとも50ページ台前半でまとめるべきです(第2話は40ページ以下、第3話以降は30ページ前後が目安です)。読切は32ページ以内で必ずまとめてください。漫画家さんにとって原稿を仕上げるためにかかる労力は、とてつもなく大きなものです。1ページの原稿を完成させるためには、半日からまるまる1日以上かかる場合もあります。そんな1ページ1ページの内容を重要視せずに書かれている漫画原作が、漫画家さんから評価されるわけがありません。1ページたりとも無駄なページを漫画家さんに描いていただくわけにはいかないことを肝に銘じてください。 書き上げたものに、あるいは以前に書いたものに、ただ適当にページの区切りを入れただけのような持ち込み作品は、講評せずにお戻しいたします。
漫画原作の基本の形式は下記を参考にしてください。
◆シナリオでの漫画原作の基本形式
1 柱
場所や時間帯、天気等を示します。
回想に入る際や回想終了の際にも使用しますが、
漫画での回想は、1話につき1~2カ所までにとどめましょう。
2 ト書き
登場人物の表情や動作、周囲の状況・環境などを説明します。
3 セリフ
登場人物が声に出して発する言葉です。
4 モノローグ
登場人物が心の中で思っていることです。 ( )でくくる以外にも、名前のあとにM を入れ、
隆M「(うなずきながら)そうか…そういうことか」 と表記する方法もあります。 この場合の( )では、表情、しぐさ、挙動などを補完することができます。
ちなみにナレーションは二重カギを用い、
N『ある夜、椎名家では家族会議が行われていた』
隆N『夕飯後、部屋に戻ろうとする俺を親父が呼び止めたんだ』 などとします。
5 漫画内でのページの区切り
漫画原作では、漫画1ページ1ページに入る場面やコマをある程度想定し、
漫画になった際のページごとにシナリオを区切っていきます。
「■P1 、■P2 …」や「<ページ01> 、<ページ02> 」などの形です。
→『お前妹じゃなくて許嫁だったのかよ!?』第1話はこちら
③1つ1つの【セリフや会話が長すぎるものはNG】 。講評をせずにお戻しする場合があります。
テキストシナリオの場合、セリフの一文が長すぎるもの、会話シーンが長すぎるものは漫画原作としては通用しにくいです。シナリオの状態で3行を超えるような長いセリフや、場変わりしないまま漫画にして6ページを超えてつづく会話シーンなどが頻出しては、回想やイメージを描写するなど見せ方や演出での工夫がないかぎり漫画として読むこと自体、なかなか困難です。上のシナリオ原作画像の★ 部分をご覧いただけばわかるとおり、漫画1ページ分に入れることのできる要素の量は決して多くはありません。セリフ1つ1つの文字量も非常に少ないこともおわかりいただけるかと思います。
漫画におけるセリフの長さの目安、会話シーンの長さの目安は、あなた自身がお好きな漫画や人気の漫画、書きたいものと同じ魅力・方向性の漫画の第1話を何作品かシナリオに戻して みて、ぜひご自分で確かめてください。この鍛錬をすると、漫画に適切な会話の文字量やシーンの長さの感覚、さらには漫画には会話以外にどんなシーンがあるのか、漫画で非常に重要な第1話に必要な要素は何かなど、いろいろなことがつかめて勉強になるはずです。漫画原作者を目指すのであれば、ぜひ実践してみてください。序盤から場変わりしない会話シーンや世界観の文字説明が何ページも続く作品は、読者にすぐにページを閉じられてしまい漫画として即終了です。大変恐縮ではありますが、そういった状態の漫画原作は当編集部には応募しないようお願いいたします。上記の赤文字 のような鍛錬を重ね、読者を夢中にさせ続ける魅力的なシーンを冒頭からラストまでどう書き連ねていくか──それを常に勉強し、意識しながら執筆してください。
④漫画は【最高のキャラクターと出会うためのもの】 です。ストーリー展開で面白がるものではありません。
テキストで漫画原作を応募いただくその多くは、ストーリー展開や派手なイベントなどで読者を驚かせようとする方ばかりです。漫画は、思わず大好きになってしまうような魅力的なキャラクターを味わい愛するためのものであり、派手なストーリー展開だけを並べても楽しめるものではありません(ホラーやサスペンス色の強いもの、デスゲーム、デスサバイバル系などを除く)。読者にキャラクターを好きになってもらったり、共感されたりしていなければ、ストーリーをいくら揺さぶっても読者は何の面白みも感動も、ドキドキやハラハラも感じてはくれません。
あなたが生み出す【今までにない魅力的なキャラクター】が【今までにない魅力的な言動】を一貫してくり返しつつ突き進んでいくから、【今までにない魅力的なストーリー】が形作られていきます。 おおまかな筋やストーリー展開から先に考えてしまうと、あとからキャラクターを考えようとしても、すでに決められた展開からはみ出すことのない、ありがちな言動しかとらない、つまらないキャラクターしか生まれてはきません。漫画はストーリー展開よりも、キャラクターを考えるのが先でないといけないんです。ストーリー展開も世界観設定の細部に至るまでも、あなたのキャラクターの魅力を読者に見せつけるために考えるべきものなのです。「こんな最っ高のキャラクターを思いついたんだけど、どう!?」と作者が魅力的なキャラクターたちを読者に提案するためのもの、それが漫画です。「何が起きるのか!?」ではなく、「最高のキャラクターが何を起こしてくれるのか!?」が重要なのです。 あなたにも、大好きな作品の大好きな人気キャラクターがいると思います。あなたの漫画原作のなかで描かれていくキャラクターが、その人気キャラクターに匹敵するぐらいの魅力を持っていないと、あなたの作品のヒットなど到底望めませんし、連載すらも実現いたしません。あなたが思い浮かべているキャラクターが、あなたが大好きなその人気キャラクターや、今の時代を代表するヒットキャラクターたちに匹敵する魅力を持っているのか──? それを常に確認しながら、キャラクターや作品を構築していく必要があるのです。 応募していただく漫画原作には、ありきたりなキャラによる、ありきたりなストーリーのものが非常に多いです。そんなストーリーをありきたりではないようにするのは、新しくて強い魅力や個性を持った、突き抜けてカッコよかったり可愛らしかったりいいヤツだったり真っ直ぐだったり健気だったりする、ありきたりではない唯一無二のキャラクターなのです。 そんなキャラクターが、ありきたりなストーリーをぶち壊して突き進んでいってくれるから、誰も見たことのない新しくて面白いストーリーになっていくのです。 漫画原作を制作するなら、まずはとんでもなく魅力的で新しいキャラクター(あるいは魅力的なキャラ同士の関係性)を生み出すところからはじめてください。その際、キャラクターが、痛快であったり印象的であったりするアクションや行動、言動をとって大活躍している、読者が見たこともないような大ゴマ、1ページゴマ、見開きゴマなどをまず思い浮かべることができると、そのコマに登場しているキャラクターは誰も見たことがないような新しいキャラクターになりやすいと言われます。「最高のクライマックスシーン」から魅力的なキャラクターを作り出すやり方です。キャラクターの創作の方法の1つとして、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
⑤「すっごくおもしろかったー!!」と【読者を大満足させる第1話】 を書きましょう!!
漫画原作として応募いただく作品には、第1話を読んでも主人公が活躍するシーンや最高の魅力を発揮するシーンが、いっこうに描かれていないものが非常に多いです。漫画の場合、第1話で“その作品ならではの面白さ”を見せつけて読者の心をわしづかみにできなければ、第2話以降を読んでもらえることはありません。“その作品ならではの面白さ”とは、④で挙げたとおり【読者がキャラクター(主人公ら)を思わず好きになってしまう or 惹かれてしまう最高のシーン】です。 キャラクターが大活躍する場面や魅力が全開となる場面などで、読者を憧れさせたり共感させたり、読者に最高にいいヤツだ or すごくおもしろそうなヤツだと感じさせたり、愛おしく感じさせたり、かわいらしく(あるいは逆に、かわいそうに)感じさせたり、あやしい魅力や危険な魅力を感じさせたり……といったことができなければ、【キャラクター=作品】を好きになってもらうことなどできないのです。“その作品ならではの面白さ”を設定の派手さ、派手なイベントやバトルを起こすこと、衝撃の謎を示すこと……こういったものだと勘違いしている方が非常に多いのですが、大切なのは【キャラクター】が見たこともないようなそのキャラクターだけの魅力的な言動をとったり大活躍をしたりするシーンなのです。 ただ、派手なイベントを起こしたり、謎を見せたりしていけばいいのではありません。 人気漫画は、第1話がとびきり面白い「読切」のような形になっているものです。漫画のストーリーはいわゆる「起承転結」のような形が何度も繰り返されていくものですが、その作品で“一番最初の「起承転結」”の“結”までが第1話の中に描かれているイメージです。なぜそうなっているのかと言うと、キャラクターが痛快に活躍するクライマックスシーンや魅力全開のシーン、感動の名シーン、素敵なセリフを言うシーンなどの多くの見せ場が、「起承転結」の“転”や“結”で初めて描かれることになるからです。第1話のうちにそんな最高のシーンを見せつけなければ、読者にキャラクター(=作品自体)を好きになってもらうことなどできないのです。必ずしも「起承転結」のような型にはめる必要はありませんが、漫画の第1話はその作品自体の縮図のようなかたちとなっていて、“どんな魅力&面白さの漫画(=キャラクター)なのか?”“どう楽しめばいい漫画なのか?”を、満足感のある一定のオチまでを見せて、わかりやすく紹介できていなければなりません。 「この漫画は第2話から面白くなります!」とか「第3話で衝撃の事実が明らかになります!」といった展開では、あまりにも遅すぎます。キャラクター(主人公ら)の魅力が第1話の中で強烈に、鮮烈に描かれていて初めて、読者に「あー! すっごくおもしろかったー!! 第2話も絶対に読まなきゃ!!」と思わせることができるのです。 あなたが大好きになった漫画の第1話も必ずそのようになっているはずです。
⑥物語のなかに【“感動”を作るには登場人物の“心”を変える】 必要があります。
人を感動させる物語では、何かしらよくない状態で出てきた登場人物1人(あるいは主人公自身)の心が、物語の終わりまでに主人公(または相手役やサブキャラ)の活躍や努力、助けによって、よい方向に変わっている……というケースが非常に多いです。その活躍も【キャラクターの魅力】ですし、誰かの心がよい方向に変わること(=成長)が読者の【感動】を呼びます(逆に登場人物の心が、よい状態、または普通の状態から悪い方向、悲しい方向へと変わると、読者にとって考えさせられたり身につまされたりする感動となります)。 登場人物1人の“心”を変えることは、読者の心をわしづかみにしたい漫画の第1話や読切では、不可欠な要素ではないかと思われます。ところが持ち込みしていただいている多くの漫画原作の第1話には、そういった心を変える登場人物がほとんど現れません。だから感動もまったく味わえません。あなたがこれまでに味わったなかで、最高におもしろかったと思う作品や漫画の第1話を思い浮かべてみてください。登場する誰かの心が、別の誰かの強い影響を受けてエンディングまでに大きく変化していませんか? そういった部分をよい漫画・よい作品・よい物語からたくさん学び、感動として書きつづけていくことができるかどうかが、漫画原作者になれるかどうかの重要な分かれ目となります。 連載作品の第1話や読切には、読者(=登場人物)の心をわしづかみにしてしまうような、キャラクターの最高の魅力を描いた活躍シーンや感動シーンを必ず、絶対に入れ込んでください。
以上がこれまでに漫画原作を持ち込んでいただいた、多くのみなさんに共通する課題です。 今後、ご応募いただく作品につきましては、必ずこれらをふまえ制作をお願いいたします。
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